8年間で家電量販店の店舗数と1店舗売上はどのように変わったのか

出店が続く家電量販業界であるが、その実態を調べてみた。2014年から2021年の8年間で、家電量販店の店舗数と1店舗売上はどう変わったのか?また店舗増加率と1店舗平均売上の関係、地域別店舗数と人口・売上の関係など、家電量販業界の現状をデータを元に紐解いていく。

出店と売上の変化

ヤマダデンキ、ケーズデンキは出店地域を全国各地に展開しているのに対して、ヨドバシカメラ、ビックカメラ、エディオン、上新電機、ノジマは地域に特化している。ヤマダデンキ、ケーズデンキは出店が旺盛であり2022年に入ってもその勢いは衰えないが、この二社に対して地域のチェーンも出店等で対抗している。

出店が続く家電量販業界であるが、その実態を調べてみた。
経済産業省の商業動態統計では家電量販企業の地域別売上(各地の経済産業局による地域区分)と店舗数推移がわかる。

商業動態統計で具体的な数値統計を取り出した2014年から直近の2021年で地域別に店舗がどれくらい増加したのか、また1店舗当たりの売上はどのように変化したのか調べてみた。家電量販店の地域別店舗数と店舗増加率、1店舗平均売上は下記のようになっている。

2014年からの2021年までの出店の変化と1店舗平均売上
※経済産業省「商業動態統計」(時系列データ・暦年ベース)に基づく。1店舗単純平均売上はクロスで算出

本統計に基づくと、2014年から2021年の8年間で、全国では190店舗増加していることになり、関東は2021年に964店と最も店舗数が多い。経済産業省の統計は経済産業省局別の地域区分であり、一般的な関東(1都6県)に新潟、山梨、長野、静岡も加わっているため大きな数字になっているが、この地域だけで店舗数は88店と大幅に増加している。

一方、この8年間では唯一東北で店舗数が減少しており、四国はほぼ横ばいといった状況だ。店舗数の増加でみれば沖縄、北海道、関東、中国が顕著である。

店舗増加率と1店舗平均売上の関係

次に各地域の1店舗あたりの平均売上(地域別販売額を店舗数で割ったもの)を見てみると、やはり関東や関西といった地域の1店舗当たり売上が大きくなっている。これらの地域はヨドバシカメラやビックカメラ、LABIといった大型店舗があるため1店舗あたりの売上は高くなる傾向にあるが、やはり人口集積度が高く商圏内人口の多さなどから他の地域と比べると売上が大きい。

東北は店舗数が減少しているが、1店舗あたりの平均売上は約13億円程度であり他の地区が8年前と比較するといずれもダウンしている中で、唯一アップしている。ただ、東北の主要都市では競合が激しくなっており、広範囲に出店しても効率はあまり良くない地区と考えることができる。これは九州地区でも同様で、1店舗あたりの平均売上は11億円程度でそれほど大きな変動はないが、店舗数は増えており過当競争になっていることがうかがえる。

例えば、ノジマは関東地区中心に出店を増やし、上新電機も近畿地区を中心にしているが、これらの家電量販企業が比較的順調に伸長しているのは、1店舗あたりの売上効率の良い地区に絞り込んで出店していることがプラスになっていると考えられる。

家電量販企業の出店戦略を考えた場合、関東や関西は1店舗当たりの売上が大きい大型店舗で売り上げ確保した方がよく、東北、四国、九州といった地区では、1店舗当たりの売上が小さいためにスクラップアンドビルドによる店舗活性化が効果的と考えられるだろう。

店舗増加率と1店舗平均売上の関係

※クロス調べ

地域別店舗数と人口・売上の関係

ところで、家電量販企業の店舗あたりの売上は商圏人口に左右されることが多い。
当然のことながら、商圏人口の多いエリアほど売上は取りやすくなる。だから、流通企業は真っ先に店舗あたりの商圏人口を綿密に調査してから出店や移転リニューアルの可否を決めている。

そこで、地域別に1店舗当たりの平均の人口を調べてみた。商圏人口は立地場所からの交通手段の時間でだいたい推定されるが、こちらはあくまでも目安として行政人口を店舗数で割ったものである。

地域別店舗数と1店舗当たりの平均人口
※クロス調べ

関東地区は人口構成比が全国の中で41.5%もあるが、店舗構成比で見ると全体の36.6%となる。1店舗当たり人口は54,300人と各地区と比べても一番多く、まだ出店余地があることが分かる。ノジマやケーズデンキがこの地域を中心として出店攻勢をかけているのは、まだ、出店余地があり、しかも1店当たりの平均人口が多いことが判断基準になっていると考えられる。

関西は多くの店舗が出ているが、1店舗あたりの売上や1店舗あたりの人口が関東地区に次いで多く、交通アクセスなど人の流れが良い場所があれば、まだ売上拡大が出来そうである。

一方で、東北、中部、中国、四国、九州といったエリアでは、1店舗あたりの人口が少なく、実際に1店舗当たりの売上も小さいために、出店投資を極力抑えた上で売上がそれほど大きくなくても利益の出るようなオペレーションを考えた店舗づくりが必要になっている。

1店舗当たりの人口と1店舗平均売上

※クロス調べ