ヤマダホールディングスの決算動向

Yamada Holdings

はじめに

2004年に家電量販企業として初となる売上高1兆円を達成し、エコポイント制度による買い替えや地上アナログ停波に伴うテレビ買い替え需要が大きく伸長した2010年度には連結売上高で約2兆1,532億円を記録しましたが、その後は売上も若干停滞気味に。ただし、店舗展開では家電量販店では唯一である全都道府県に直営店を出店しています。現在は社会変化や市場環境の変化に対応し、家電製品の販売だけでなく、住宅・リフォームや住宅設備機器、金融・保険、リサイクル等の環境ビジネスなど、事業分野を拡大。特に住宅関連分野を推進し、店舗でも家電製品と家具・インテリア商材の組み合わせ等、「くらしまるごと」提案を強化しています。「Tecc LIFE SELECT」をはじめ、規模や商圏に応じた業態化店舗も着々と増やし、積極的に新店もオープンさせています。

売上高、売上高伸長率

ヤマダHDの売上高、売上高伸長率2018年度から2019年度にかけては前年比100%台をわずかに超える微増で推移していましたが、2020年度はコロナ禍における巣ごもり需要、特別定額給付金の支給、さらにGIGAスクール構想によるPC・タブレット特需が重なり、売上高は約1兆7,525億円・前年比108.7%と大幅な伸長を記録しました。しかし翌2021年度はその反動減により92.4%と急落し、約1,330億円の減収に。その後も2022年度98.8%、2023年度99.5%と3期連続で前年割れが続きました。しかし、2024年度は1兆6,290億円・前年比102.3%と3期ぶりの増収に転じており、住宅・リフォーム事業やインバウンド需要の取り込み、「くらしまるごと」戦略による客単価向上が寄与しているものと見られます。ただし、コロナ特需前の2019年度(約1兆6,115億円)とほぼ同水準に戻った段階であり、ここから再び成長軌道に乗せられるかが今後の焦点です。

売上総利益、売上総利益率

ヤマダHDの売上総利益、売上総利益率売上総利益は2018年度の約4,410億円から2019年度に約4,607億円へ増加し、売上総利益率=粗利率も27.6%→28.6%と1ポイント改善しました。2020年度はコロナ特需による売上増に加え、粗利率も29.7%まで上昇し、売上総利益は約5,210億円に達しました。巣ごもり需要で高付加価値商品が売れやすい環境だったことに加え、価格競争がやや緩和したことも粗利率の改善に寄与したと考えられます。2021年度以降は売上の減少に伴い粗利額も減少していますが、注目すべきは粗利率が28%台を安定的に維持している点です。2022年度に28.0%まで低下したものの、2023年度28.5%、2024年度28.1%と大きく崩れてはいません。これは、住宅・リフォームや家具・インテリアなど利益率の高い非家電カテゴリーの構成比が高まっていることや、PB商品の拡充といった「くらしまるごと」戦略が粗利構造の下支えとして機能していることを示唆しています。ただし、2020年度の29.7%と比較すると約1.5ポイント低い水準にとどまっており、30%の壁を再び突破できるかが収益力向上のカギとなります。

営業利益、売上高営業利益率

ヤマダHDの営業利益、営業利益率2018年度の営業利益は約279億円・営業利益率1.7%と、売上規模に対して利益が薄い構造でした。2019年度には約383億円・2.4%へ改善し、さらに2020年度はコロナ特需による増収と粗利率改善のダブル効果で約921億円・5.3%と一気に跳ね上がりました。営業利益額は2018年度比で実に3.3倍という急伸ぶりで、売上が8.7%伸びた以上に利益のレバレッジが大きく効いた年度と言えます。しかし2021年度は売上の反動減に加え、コスト構造が重くなったことで約657億円・4.1%に低下。続く2022年度は約441億円・2.8%、2023年度は約415億円・2.6%とさらに後退し、コロナ前の2019年度の水準に近づいていきました。2024年度は約428億円・2.6%と、利益率は前年と横ばいながら額ではわずかに増加に転じています。粗利率が28%台で安定している一方で営業利益率が2%台後半にとどまっているのは、販管費の負担が大きいことを意味しており、店舗の業態転換や人件費の効率化など、コスト面での構造改革がどこまで進むかが今後の利益率回復を左右する重要なポイントです。

経常利益、売上高経常利益率

ヤマダHDの経常利益、経常利益率経常利益の推移は営業利益とほぼ同じトレンドを描いていますが、各年度とも営業利益を上回っている点が特徴的です。2018年度は約369億円(1.7%)、2019年度は約461億円(2.4%)と着実に改善し、2020年度には約989億円・5.3%と大幅に拡大しました。営業利益の約921億円との差額である約68億円は営業外収益の寄与であり、持分法投資利益や受取利息・配当金など、グループ経営による営業外の収益力もこの時期に厚みを増していたことがうかがえます。2021年度以降は営業利益と同様に縮小傾向となり、約741億円(4.1%)→約501億円(2.8%)→約470億円(2.6%)と推移。2024年度は約480億円・2.6%で、前年からわずかに増加しています。営業利益との差額(営業外損益)は2024年度で約52億円のプラスとなっており、本業以外の収益基盤も一定の安定感を保っています。ただし経常利益率が2.6%台で2期連続横ばいとなっており、ここから一段上の水準へ引き上げるには、営業利益の改善に加え、グループ会社の収益貢献やファイナンスコストの最適化も含めた総合的な利益構造の強化が求められます。

純利益、純利益伸長率

ヤマダHDの純利益、純利益伸長率純利益は他の利益指標以上に変動が激しく、ヤマダHDの業績のボラティリティが最も顕著に表れている項目です。2018年度は約147億円にとどまりましたが、2019年度には約246億円、純利益伸長率は167.5%と大きく回復し、続く2020年度はコロナ特需の恩恵を受けて約518億円・210.5%と前年比2倍超を達成。わずか2年間で純利益が約3.5倍に膨らむという急成長を見せました。2021年度は経常利益が大きく減少したにもかかわらず、純利益は約506億円・97.6%とほぼ前年並みを維持しており、特別利益の計上や税効果など最終損益段階での調整が効いた可能性があります。しかし2022年度は約318億円・62.9%、2023年度は約241億円・75.6%と2期連続で大幅に縮小し、2018年度の水準に近づいていきました。2024年度は約269億円・111.9%と反転し、2期ぶりの増益を確保しています。売上高の回復(102.3%)に対して純利益の伸び(111.9%)が上回っていることから、利益のレバレッジが多少なりとも回復基調にあると読み取れます。ただし2020年度のピーク時と比較すると依然として約半分の水準であり、EPS(1株当たり利益)や株主還元の観点からも、さらなる利益成長が株式市場から求められる局面にあると言えます。

販管費、売上高販管費率

ヤマダHDの販管費、売上高販管費率販管費の額は期間を通じて約4,000億円〜4,300億円のレンジで推移しており、売上高の変動と比べると相対的に硬直的なコスト構造であることが読み取れます。2018年度は約4,131億円(25.8%)、2019年度は約4,223億円(26.2%)と額・率ともに上昇していましたが、2020年度は売上がコロナ特需で急伸したことで、販管費額は約4,290億円と微増にとどまる一方、販管費率は24.5%まで一気に低下しました。売上が伸びた局面でコストが大きく増えず、利益を大きく押し上げた構図です。これが営業利益率5.3%という突出した数字の裏側にあったメカニズムと言えます。しかし2021年度以降は売上が縮小に転じたにもかかわらず販管費の額は大幅には圧縮できず、2021年度は約3,993億円(24.7%)と額は減ったものの率は上昇。2022年度は約4,047億円(25.3%)、2023年度は約4,127億円(25.9%)と、売上が減る中で販管費は元の水準に戻りつつあり、売上高販管費率も悪化していきました。2024年度は約4,145億円・25.4%と、増収効果で率がわずかに改善しています。粗利率が28%台で安定している中、営業利益率を左右するのはこの販管費率のコントロールであり、25%を切る水準まで再び引き下げられるかが、利益率3%超への回復に向けた最大の課題です。店舗の業態転換による運営効率の向上やDX投資による人件費・物流費の最適化が今後のカギとなるでしょう。

広告宣伝費、売上高広告宣伝費率

ヤマダHDの広告宣伝費、売上高広告宣伝費率広告宣伝費は期間を通じて明確な削減トレンドが見て取れます。2018年度は約267億円・1.7%、2019年度は約263億円・1.6%と、コロナ前の段階で年間260億円超の広告投資を行っていました。しかし2020年度に大きな転換点を迎え、約216億円・1.2%と額にして約47億円の削減を実施。コロナ禍で巣ごもり需要が自然発生し、積極的な広告投下をしなくても集客できた環境が背景にありますが、注目すべきはその後も広告費をコロナ前の水準に戻していない点です。2021年度は約226億円(1.4%)、2022年度は約216億円(1.4%)、2023年度は約224億円(1.4%)と210億〜230億円のレンジで推移し、2024年度は約215億円・1.3%まで減らしています。2018年度と比較すると年間約50億円以上の広告費を恒常的に削減できており、これは販管費率の抑制に一定の貢献をしています。背景としては、折込チラシなどマス広告からデジタルマーケティングへのシフトや、自社アプリ・ECサイト経由の集客強化により、広告効率が改善していることが推測されます。ただし広告費の抑制が続く中で、新規顧客の獲得やブランド認知の維持にどの程度影響が出ているかは注視が必要です。

給与及び手当、売上高給与及び手当率

ヤマダHDの給与及び手当、売上高給与及び手当率給与及び手当は、広告宣伝費とは対照的に一貫して増加傾向にあります。2018年度の約1,073億円(6.7%)から2024年度の約1,184億円(7.3%)まで、約111億円増加しており、売上高が横ばい圏で推移する中での人件費増は収益を圧迫する構造的な課題となっています。2020年度は売上のコロナ特需による急伸で率こそ6.4%と期間中の最低水準を記録しましたが、額自体は約1,118億円と前年から増加しており、人件費が売上の変動に関係なく下方硬直的であることが明確に表れています。2021年度以降は売上が縮小に転じる一方で、給与額は約1,194億円→約1,179億円→約1,189億円→約1,184億円と1,180億円前後の高水準で高止まりしており、率は7.3〜7.5%のレンジに定着しました。コロナ前(2018〜2019年度)の6.7〜6.8%と比較すると約0.5〜0.6ポイント上昇しており、この差だけで売上高に対して約80〜100億円の負担増に相当します。背景には、住宅・リフォーム事業拡大に伴う専門人材の確保や、近年の人手不足に起因する賃上げ圧力があると考えられます。広告費で年間約50億円を削減しても、人件費の増加がそれを上回っている状況であり、従業員1人当たりの生産性向上やDXによる業務効率化がどこまで進むかが、販管費率改善の本丸と言えるでしょう。

従業員数 (従業員数・平均臨時雇用者数)

ヤマダHDの従業員数 (従業員数・平均臨時雇用者数)従業員構成に明確な構造変化が起きています。連結従業員数は2018年度の18,853人から2024年度の25,676人へと約6,800人(36%)増加した一方、平均臨時雇用者数は同期間に9,520人から5,895人へと約3,600人(38%)減少しています。つまり、非正規から正規雇用へのシフトが顕著に進んでおり、合計の労働力としては約28,400人→約31,600人と増加しつつも、その内訳が大きく変わった形です。特に2021年度から2022年度にかけての変化が大きく、臨時雇用者が8,441人→6,148人と約2,300人減少する一方、社員は22,951人→25,284人と約2,300人増加しており、ほぼ1対1で置き換わっている構図が読み取れます。この背景には、住宅・リフォームなど専門知識を要する事業領域の拡大に伴い、パートやアルバイトでは対応が難しいポジションが増えたこと、また人材獲得競争が激化する中で正社員化による人材定着を図る狙いがあると考えられます。先に見た給与及び手当の増加(約1,073億円→約1,184億円)も、この正社員比率の上昇が主因の一つでしょう。今後は増えた正社員をいかに高い生産性で活かすかが、人件費率のコントロールと事業拡大の両立に向けた重要なテーマとなります。

従業員1人当たり売上高

ヤマダHDの従業員1人当たり売上高従業員1人当たり売上高は、2018年度から2020年度まで55百万円(約5,500万円)で安定していました。2020年度はコロナ特需で売上が急伸した年度ですが、従業員数も増加していたため1人当たりの数値は変わらず、売上増の恩恵が生産性指標には直接反映されなかった形です。しかし2021年度に49百万円へと大きく低下しています。これは売上がコロナ特需の反動で減少した一方、正社員の大幅増(約24,300人→約22,951人と一見減少に見えますが、臨時雇用者を含めた総人員で計算すると増加)により、人員あたりの効率が悪化したことが要因です。2022年度は50百万円と小幅に回復し、2023年度には55百万円とコロナ前の水準を回復、2024年度は56百万円と期間中の最高値を更新しました。これは売上の回復(102.3%)に加え、臨時雇用者の削減が続いたことで総労働力が効率化されつつある結果と読み取れます。ただし、正社員数は増加し続けている中でこの数値を維持・向上できているのは、住宅・リフォームなど単価の高い事業の構成比が拡大していることの裏付けでもあります。今後、正社員の増加ペースを抑えながら1人当たり売上高を60百万円台に乗せられるかが、人的生産性の面での次の目標水準となるでしょう。

店舗数

ヤマダHDの店舗数店舗数の推移には、ヤマダHDの出店戦略の転換が明確に表れています。2018年度の975店舗から2022年度の1,028店舗まで4年連続で純増を続け、年間10〜15店舗ペースで着実にネットワークを拡大していました。しかし2022年度の1,028店舗をピークに一転して減少に転じ、2023年度は1,005店舗(▲23店舗)、2024年度は978店舗(▲27店舗)と2年間で50店舗を削減。2024年度の店舗数は2018年度の975店舗とほぼ同じ水準にまで戻っています。ヤマダHDは近年スクラップアンドビルドを加速させており、従来型の「テックランド」から「Tecc LIFE SELECT」や「LABI LIFE SELECT」など、家電と家具・インテリアを融合させた大型業態店への転換を推進しています。小規模で収益性の低い店舗をスクラップしながら、1店舗あたりの売場面積と売上を拡大する「量から質」への戦略シフトが進行中と見られます。全都道府県への直営店出店を維持しつつ、1,000店舗を割り込んでもなお売上を伸ばせる店舗効率を実現できるかが、この戦略の成否を測る指標となるでしょう。

1店舗当たり売上高 (売上高÷ヤマダデンキと連結子会社の直営店舗)

ヤマダHDの1店舗当たり売上高 (売上高÷ヤマダデンキと連結子会社の直営店舗)1店舗当たり売上高は、店舗数の推移と裏表の関係にある重要な効率指標です。2018年度は1,642百万円(約16.4億円)、2019年度は1,628百万円とほぼ横ばいでしたが、2020年度はコロナ特需の売上急伸により1,747百万円と期間中の最高値を記録しました。しかし2021年度以降は売上の減少と店舗数の増加が同時に進んだことで急速に悪化し、1,595百万円→1,557百万円と低下。2022年度の1,557百万円は期間中の最低値で、2020年度のピークから約190百万円(約1.9億円)の減少となりました。2023年度は1,584百万円とわずかに持ち直し、2024年度は1,666百万円と一気に回復しています。この2024年度の改善は、売上が102.3%と伸びたことに加え、店舗数が1,005→978店舗へと27店舗減少した「分母の縮小」効果が大きく効いています。つまり、不採算店舗の閉鎖によって全体の店舗効率が底上げされた形であり、「量から質」への戦略転換が数字に表れ始めた局面と言えます。2018年度の1,642百万円をすでに上回っており、今後さらに店舗の統廃合と業態転換が進めば、1,800百万円台への到達も視野に入ってくるでしょう。

設備投資額

ヤマダHDの設備投資額設備投資額は期間を通じてほぼ一貫した右肩上がりの成長を見せており、ヤマダHDが将来の成長に向けた投資の手を緩めていないことが明確に読み取れます。2018年度の約161億円から2024年度には約339億円へと、6年間で2.1倍に拡大しました。売上高や利益がコロナ特需の反動で縮小していた2021〜2023年度においても投資額は高水準を維持しており、特に2021年度は約298億円と前年から約58億円の増加を記録しています。売上が減少する中で投資を積み増すという判断は、短期的な利益の最大化よりも中長期の事業構造転換を優先する経営姿勢の表れと言えます。唯一2022年度に約258億円と一時的に減少していますが、これは前年の大型投資の反動と見られ、2023年度には約305億円、2024年度には約339億円と再び加速しています。投資の主な用途としては、「Tecc LIFE SELECT」など業態転換店舗への改装費用、住宅・リフォーム事業の拠点整備、EC・物流インフラの強化、さらにはDXへの投資が考えられます。店舗数を減らしながら設備投資を過去最高水準に引き上げている点は、「量から質」への転換戦略に対する経営のコミットメントの強さを示しています。この投資が今後の売上・利益にどう結実するか、投資回収のフェーズに入れるかが次の注目点です。

より詳しいデータをご希望される場合はお問い合わせください

株式会社クロスには家電業界に精通したコンサルタントが多数所属しています。また、家電業界向けのセミナーを定期的に開催し、家電業界の専門誌「家電Biz」も発行しています。家電業界に関するコンサルティングやデータ提供等も行っておりますので、ご不明な点やご要望がございましたらお気軽にお問い合わせください。