上新電機の決算動向

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はじめに

上新電機は、競合の激しい関西地区で地域密着経営を実践し、着実に売上と利益を伸ばしています。伝統のある企業であり、社員の商品知識や接客応対能力も高く、関西の顧客満足度の高い経営を実践することで成長しています。上新電機の特徴は、関西と一部の東海地方、および連結子会社が展開する北陸・信越地区に集中出店するドミナント戦略を徹底させ、商圏内の顧客に密着した商売を行っていることです。無理に出店エリアを拡大せず、効率的に顧客への商品提案・サービス提供を行っており、顧客管理やサービス提供にはすぐれたものがあります。配送設置・工事は、子会社のジョーシンサービスが行っており、その技術スキルは高いものがあるので、営業政策と一体化した質の高いサービスを提供することが可能になっています。また、店舗のないエリアに対してはEC事業でカバーすることに徹しており、全国的に展開している他の家電量販企業よりもEC売上が高く、物流センターの新設など、EC事業強化を進めています。

売上高、売上高伸長率

Joshinの売上高、売上高伸長率Joshinの売上高は、2018年度の約4,038億円から2019年度は約4,156億円へ増加し、2020年度には約4,491億円・伸長率108.1%と7年間で最高を記録しました。コロナ特需の恩恵を強く受けた年度であり、増収幅も大きかったことがわかります。もっとも、2021年度は約4,095億円・91.2%と反動減が鮮明に表れ、その後も2022年度約4,085億円・99.7%、2023年度約4,037億円・98.8%、2024年度約4,033億円・99.9%と、4,000億円前後のレンジで横ばい推移が続いています。つまり、特需で一段上がった売上規模を維持できたわけではないものの、大きく崩れることなく安定圏に戻した形です。Joshinは2026年4月1日付で社名を「上新電機株式会社」から「株式会社Joshin」へ変更する予定で、同社は「電機」の枠にとらわれない柔軟な事業展開を掲げています。 今後の焦点は、この4,000億円規模の売上を土台に、EC強化や既存店活性化によって再び成長軌道へ戻せるかにあるでしょう。

売上総利益、売上高総利益率

Joshinの売上総利益、売上高総利益率Joshinの売上総利益は、2018年度の約981億円から2019年度は約1,006億円へ増加し、2020年度には約1,122億円・売上高総利益率25.0%と7年間で最高を記録しました。コロナ特需で売上高が大きく伸びたことに加え、粗利率も前年度の24.2%から改善しており、数量面と採算面の両方が追い風となった年度です。もっとも、2021年度は売上高の反動減を受けて売上総利益も約984億円へ低下し、粗利率も24.0%まで下がりました。特需の剥落が、そのまま粗利額と粗利率の双方に表れた形です。

その後は2022年度約1,038億円・25.4%、2023年度約1,051億円・26.0%と持ち直し、2024年度は約1,022億円・25.3%となっています。2023年度の26.0%は7年間で最も高い粗利率であり、Joshinが全国へ無理に出店を広げず、関西・一部東海を中心としたドミナント戦略とEC活用を組み合わせることで、一定の採算性を維持してきたことがうかがえます。一方で、粗利額そのものは2020年度のピークを超えられておらず、足元は収益性の改善が売上規模の回復をやや先行している局面と言えます。今後の焦点は、25%台半ばの粗利率を維持しながら、売上総利益を再び1,050億円超の水準へ安定的に引き上げられるかにあるでしょう。

営業利益、売上高営業利益率

Joshinの営業利益、売上高営業利益率Joshinの営業利益は、2018年度109.9億円・売上高営業利益率2.7%、2019年度89.8億円・2.2%とやや低下した後、2020年度には165.5億円・3.7%まで大きく伸び、7年間で最高を記録しました。コロナ特需で売上高が拡大したことに加え、売上総利益も1,121.5億円まで増加しており、増収効果が営業利益に強く表れた年度です。ところが2021年度は88.8億円・2.2%へ急減し、2022年度83.1億円・2.0%、2023年度83.6億円・**2.1%**と低水準で横ばいが続きました。

さらに2024年度は営業利益が36.9億円、営業利益率は0.9%まで落ち込み、7年間で最も低い水準となっています。2023年度比でも約46.8億円の減益で、2020年度ピークからは約128.6億円の縮小です。一方で、2024年度の売上総利益は1,022.1億円と大きく崩れておらず、販管費は985.2億円、売上高販管費率は24.4%まで上昇しています。つまり足元の収益悪化は、粗利の急減というより、販管費負担の重さが営業利益を強く圧迫した構図と見るのが自然です。今後の焦点は、25%前後の粗利率を維持しながら販管費率をどう抑え、営業利益率をまず2%台へ戻せるかにあるでしょう。

経常利益、売上高経常利益率

Joshinの経常利益、売上高経常利益率Joshinの経常利益は、2018年度110.0億円・2.7%、2019年度89.0億円・2.1%の後、2020年度に165.6億円・3.7%まで急伸し、7年間で最高を記録しました。コロナ特需で売上高が拡大したことが、そのまま経常利益に反映された年度です。もっとも、2021年度は97.0億円・2.4%へ低下し、2022年度83.2億円・2.0%、2023年度82.5億円・2.0%と低水準が続き、2024年度は34.9億円・0.9%まで急減しました。営業利益との差は総じて大きくなく、営業外損益の寄与は限定的で、経常利益の振れはほぼ本業の収益力に連動していると見てよいでしょう。今後の焦点は、営業利益率の改善を通じて、経常利益率をまず2%台へ戻せるかにあります。

純利益、純利益伸長率

Joshinの純利益、純利益伸長率Joshinの純利益は、2018年度63.5億円、2019年度54.2億円とやや減少した後、2020年度に88.7億円・伸長率163.8%まで拡大しました。一方で、2021年度は63.9億円、2022年度49.7億円、2023年度48.9億円と縮小が続き、2024年度は34.1億円・69.7%まで落ち込んでいます。2020年度のピークから2024年度までは54.7億円の減少で、落ち込み幅はかなり大きいと言えます。特に2024年度は、経常利益が34.9億円にとどまる中で純利益も34.1億円と近い水準に着地しており、最終利益の絶対額そのものが細っている印象です。2024年度は黒字を維持したものの、2018〜2021年度の水準と比べると見劣りし、今後はまず純利益50億円台を安定的に回復できるかが焦点になります。

販管費、売上高販管費率

Joshinの販管費、売上高販管費率Joshinの販管費は、2018年度871.5億円・21.6%、2019年度916.2億円・22.0%、2020年度956.0億円・21.3%と推移し、2021年度はいったん895.4億円・21.9%まで下がりました。しかし2022年度は954.9億円・23.4%、2023年度967.6億円・24.0%、2024年度985.2億円・24.4%と再び増加し、販管費率も大きく悪化しています。売上総利益は2024年度でも1,022.1億円ある一方、販管費が985.2億円まで膨らんだことで、営業利益は36.9億円まで圧縮されました。つまり足元の収益悪化は、粗利の急減というより、販管費負担の重さが主因です。今後の収益回復には、売上を大きく伸ばすこと以上に、販管費率を23%台へ戻せるかが重要な論点となるでしょう。

広告宣伝費、売上高広告宣伝費率

Joshinの広告宣伝費、売上高広告宣伝費率Joshinの広告宣伝費は、2018年度135.7億円・3.4%、2019年度139.9億円・3.4%と高い水準でしたが、2020年度は111.7億円・2.5%へ低下し、その後も2021年度82.7億円・2.0%、2022年度73.5億円・1.8%、2023年度72.1億円・1.8%、2024年度68.9億円・1.7%と縮小が続いています。7年間で見ると、広告宣伝費は70億円近く減っており、販促投下をかなり絞り込んできたことがわかります。注目すべきは、販管費全体が悪化する中でも、広告宣伝費はむしろ減少している点です。つまり販管費率上昇の主因は広告費ではなく、人件費や店舗運営費など他のコスト要因にあると考えられます。今後は広告費を抑えたまま売上を維持できるのか、それとも再成長に向けて販促投資を積み増すのかが見どころです。

給与及び手当、売上高給与及び手当率

Joshinの給与及び手当、売上高給与及び手当率Joshinの給与及び手当は、2018年度234.9億円・5.8%、2019年度240.9億円・5.8%、2020年度240.8億円・5.4%とほぼ横ばいでしたが、2021年度241.7億円・5.9%、2022年度244.9億円・6.0%、2023年度249.3億円・6.2%、2024年度**254.6億円・6.3%とじわじわ上昇しています。金額ベースでは大きな跳ね上がりではないものの、売上が伸び悩む中で比率が着実に悪化している点が重要です。2020年度の5.4%から2024年度は6.3%**へ上昇しており、販管費率悪化の一因が人件費にあることは明らかです。広告宣伝費を削っても利益が戻りにくい背景には、この人件費負担の重さがあります。今後は賃上げや人材確保を進めながらも、売上成長と生産性向上で給与及び手当率をどこまで抑えられるかが、収益改善の鍵になります。

従業員数 (従業員数・平均臨時雇用者数)

Joshinの従業員数 (従業員数・平均臨時雇用者数)Joshinの連結従業員数は、2018年度3,876人から2019年度3,940人、2020年度4,024人、2021年度4,144人、2022年度4,184人、2023年度4,245人、2024年度4,295人へと一貫して増加しています。一方、平均臨時雇用者数は2019年度の3,871人をピークに、2020年度3,689人、2021年度3,671人、2022年度3,505人、2023年度3,344人、2024年度3,171人と減少傾向です。つまりJoshinは、臨時雇用に依存するよりも、正社員を厚くする方向へ人員構成をシフトしてきたと見られます。売上が横ばい圏でも正社員数を増やしてきたことは、接客やサービス品質を重視する姿勢の表れとも言えますが、その一方で固定費化が進み、給与及び手当率の上昇にもつながっています。今後は人数の増減だけでなく、この人員構成の変化をどこまで売上や粗利の向上に結び付けられるかが重要です。

従業員1人当たり売上高

Joshinの従業員1人当たり売上高Joshinの従業員1人当たり売上高は、2018年度7,100万円、2019年度7,074万円、2020年度7,653万円と推移し、2020年度にピークをつけました。ところが2021年度は6,849万円へ低下し、その後も2022年度6,880万円、2023年度6,823万円、2024年度6,858万円と、7,000万円を下回る水準が続いています。2024年度は2020年度ピーク比で約795万円低く、特需期の生産性は取り戻せていません。もっとも、2021年度以降も大きく崩れず6,800万円前後で踏みとどまっており、従業員数が増える中でも一定の水準は維持していると言えます。今後の焦点は、正社員比率の上昇と人件費増を踏まえ、1人当たり売上高を再び7,000万円台へ戻せるかどうかです。人員を厚くした効果が接客力やEC連携の強化として表れれば、収益改善余地は十分にあります。

店舗数

Joshinの店舗数Joshinの店舗数は、直営店ベースで2018年度232店、2019年度234店と小幅に増えた後、2020年度215店、2021年度208店へと減少しました。その後は2022年度216店、2023年度214店、2024年度215店と、おおむね210店台半ばで安定しています。7年間で見ると、2019年度の234店から2024年度は215店へ減っており、無理な出店拡大よりも店舗網の絞り込み・最適化を進めてきたと解釈できます。Joshinは関西・一部東海への集中出店と、店舗のないエリアをECで補完する方針を採っており、店舗数の純増で成長を追うモデルではありません。むしろ、限られた店舗網でどれだけ売上と収益を確保するかがポイントです。今後も店舗数そのものより、既存店の競争力とECとの役割分担が経営の重要テーマとなるでしょう。

1店舗当たり売上高

Joshinの1店舗当たり売上高Joshinの1店舗当たり売上高は、2018年度17.41億円、2019年度17.76億円、2020年度20.89億円と上昇し、2020年度にピークをつけました。2021年度は19.69億円へ低下したものの、2022年度18.91億円、2023年度18.86億円、2024年度18.76億円と、なお2018〜2019年度を上回る水準を維持しています。これは、店舗数を絞り込みながら売上規模を保ってきた結果であり、店舗当たりの生産性は依然として高いと言えます。特に2019年度から2024年度にかけて店舗数は234店から215店へ減っている一方、1店舗当たり売上高は17.76億円から18.76億円へ上昇しており、選択と集中が一定の効果を上げていることがわかります。今後の焦点は、この18億円台後半を維持しつつ、再び19億円台へ戻せるかです。店舗数を増やさずとも既存店の質を高める戦略が、Joshinらしい成長モデルと言えるでしょう。

設備投資額

Joshinの設備投資額Joshinの設備投資額は、2018年度98.9億円、2019年度81.2億円、2020年度84.9億円と100億円未満の水準で推移した後、2021年度に93.9億円、2022年度92.5億円とやや高まりました。しかし2023年度は70.4億円、2024年度は59.4億円まで低下しており、直近では投資をかなり抑制していることがわかります。店舗数も2021年度以降は大きく増えていないため、出店拡大のための攻めの投資より、既存資産の維持・選別に軸足を置いた運営に移っている可能性が高いです。売上が4,000億円前後で横ばい、営業利益が大きく落ち込む中では、投資回収を重視する慎重姿勢は自然です。今後の焦点は、投資を抑えたことが短期の利益防衛につながる一方で、中長期の店舗競争力やEC基盤強化にどこまで影響するかにあります。抑制局面のあとに、どの分野へ再投資するかが次のテーマになるでしょう。

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